「信頼」の「見える化」こそ価値。まちに愛される事業者のシンボルとして、『おもてなし規格認証』を活用したい。
地方創生に本腰を入れる日本において、身近にあるものの価値を強く意識し、地元のコミュニティで育ったものを大事にしようとする考えが広がっている。そんな中、自治体や大手企業主体の「トップダウン型のまちづくり」だけではなく、専門的な知識を持つフリーランサーやまちに根付く商店などが協力しあって地域活性化に取り組む「ボトムアップ型のまちづくり」も目立つようになってきた。
その強みは“地元のエキスパート”である住人ワーカーが集うことで、奥行きがある情報交換ができること。また「地域課題の解決を行政任せにしない」「意欲的にアイディアを出し合う」など、地域の結束力を高める要因にもなっているようだ。
そういった潮流を代表するかのように、北九州でもおもしろい動きが起きているという。仕掛け人は、一般社団法人『まちはチームだ』。『コワーキングスペース秘密基地』の運営に中心的に関わり、起業を目指す人材の育成や創業支援、地域活性事業などを行っている。
「まちの活性化や地域課題の解決のためには、人材のネットワークが必要不可欠です。私たちは、コワーキングスペースの利用者同士、または利用者と地域のインフルエンサーとの交流の場を設けるなど、新しいビジネスにつなげるためのきっかけ作りに尽力しています」。そう語るのは、主力メンバーの中川康文さんと岡浩平さん。さまざまなプロジェクトに取り組む過程でネットワークを構築し、地域の潜在資産である地元ワーカーたちをまきこみながら、まちづくりに貢献したいと考えているそうだ。
これまでにも数々のプロジェクトを成功させ、行政機関や地元企業からの信頼を高めてきた彼ら。なかでも主力事業のひとつとして力を入れているのが、例年3万5000人ほどの来場客を集めるという『北九州フードフェスティバル』だ。その第4回が開催されるということで、現地に足を運んでみた。
開催地は、小倉駅新幹線口から海方向へ歩いて数分のところにある『あさの汐風公園』。「ギラヴァンツ北九州のホームスタジアム『ミクニワールドスタジアム北九州』誕生に向けて、小倉駅の北側に人の流れを作りたい」という行政機関からの相談を受けて、スタートをきったイベントなのだという。
さて、小雨にも関わらず会場は大賑わい。40店舗の地元料理店が腕を振るうとあり、『ゆず唐揚げ』『ベジたこ焼き』『地鶏炭火焼き』『パスタ』『パニーニ』など、料理も多種多様。『焼きうどん』や『焼きカレー』といった北九州らしいグルメもあるが「地元グルメのすばらしさや質の高さを広めたい」がコンセプトとあって、有名どころ一辺倒ではなく、実行委員会が目利きしたローカルフードが並んでいるようだ。
特筆すべきは、全出店者が『おもてなし規格認証』取得事業者であること。『まちはチームだ』は、『おもてなし規格認証』の認証支援事業者として北九州地域のサービス事業者向けに登録の呼びかけを行っているそうで、担当の中川さんは、その経緯を次のように語る。
「“働く”と“人がつながる”が自然に一体化することを望む我々にとって、「おもてなし」はまさにカギを握る言葉です。そんな中で出合った『おもてなし規格認証』は、地域の“おもてなし力”をより高めるために活用したい仕組みでした。事業者にとってはサービス向上のためのモチベーションアップや業務改善につながり、さらにそういった意欲を可視化することができるので、まちを上げて応援がしやすくなります。『北九州フードフェスティバル』が良い例です。『おもてなし規格認証』は「信頼できる事業者の証」であり、実行委員会も自信を持って来場者の皆様におすすめができるわけです」。
さらにメンバーの胸にあったのは、「たとえば飲食店では味のみが評価の対象になりがちだけど、店主の志や人となりにも目を向けてもらいたい」という思いだった。そこで、認証取得事業者に対してインタビューを行い、ウェブメディア『キタキュウピープル』でPRするサービスも独自に繰り広げているそうだ。
2019年に開催されるラグビーワールドカップにおいて、ウェールズ代表の合宿地に決まっている北九州。インバウンドをはじめとする観光事業においても『おもてなし規格認証』への期待値は高いそうだ。
「地元っ子には親しまれているけれど、観光客にとってはディープで入りづらい印象の店ってあるじゃないですか。そういったお店にこそ本制度を活用してもらって、堂々と“まち遺産”を謳ってもらいたいんです。『おもてなし規格認証』は、まちに愛される事業者のシンボルであって欲しいと願っています。そうやってまちの魅力が明確になり、まちが活気づいてくれることがなによりも嬉しいですね」と中川さん。
今後は『おもてなし規格認証』取得事業者がその利点やおもしろみを伝える勉強会などを試みて、さらに多くの賛同を得たいとも考えているとのこと。「『おもてなし規格認証』のような制度は、意欲的な事業者同士が結束するための良いきっかけになります。まだまだ手探りではありますが、あらゆる事業者がそれぞれの専門分野を活かしてつながることが、まちの活力を生み出すものだと信じています」。
『おもてなし規格認証』の活用法はさまざま。まちと人の信頼関係に基いて事業やサービスを行う『まちはチームだ』にとって、そのサービスを提供する側と受ける側のやりとりの中に生まれる経験価値を重んじているようだ。今回の事例は飲食サービスが中心だったが、ここ北九州でも情報・観光・交通などのあらゆるシーンで『おもてなし規格認証』が広まる可能性を感じているという。「地域と人、人と人がつながるために必要なのが信頼。その信頼を「見える化」できることに価値を感じます」と、締めくくってくれた。