2023年10月8日(土)
開館60周年を迎える福岡市民会館で開催しました。
多くの方々のご支援をいただきレガシーピアノは約1年をかけて修復を終え、福岡市民会館にてその姿をお披露目させていただきました。
当日の模様をここにフォト・レポートでご紹介してまいります。
会場にお越しになれなかった方々に少しでも当日のその熱いパッションと音楽を感じていただければ幸いです。
14:30 開場
15:00 開演
第I部 Regeneration 伝えゆく想い
暗闇の舞台の中、一人の少女が静かに現れ一筋の光が灯されると、その少女はモーツァルト「きらきら星」を奏で始めました。一体何がはじまったのか、場内は緊張が高まります。
そこに仲道郁代さんが登場、少女の横に座り、ともにモーツァルトを。そしてこの曲はみるみるうちにエルガーの「愛のあいさつ」へと展開、やさしい軽やかな音を響かせていきました。
さあ、60年前にはるばるドイツからやってきたピアノが眠りから覚めて、新たな舞台の幕明けです!
このオープニングの大役を演じたのは地元(福岡市)の小学5年生の原口凛々子さんです。次の世代へこの文化遺産であるピアノを繋いでいこうという想いを見事に演じてくださいました。
そして、このコンサートの芸術監督を務められた仲道郁代さんの司会進行で、前半第1部は4人のピアニストによるソロ演奏とこのピアノにサインを残した巨匠達にまつわる各人のエピソードや想いを交えながら進んでいきます。
- シューマン:子供の情景より「見知らぬ国と人々について」「トロイメライ」
- ビュッシー:ベルガマスク組曲より「月の光」
どこまでもやさしく、ロマンティックな演奏を披露された萩原麻未さん。「このピアノを弾いているとピアノからのメツセージが感じられとても幸せな気持ちになります」と述べられました。
- リスト:愛の夢 第3番
- リスト:献呈(シューマン)S.566 R.253
「子供の頃からF.ディースカウとエッシェンバッハの二人が演奏する歌曲が大好きでよく聴いていました。このピアノに二人のサインが残されていることはなんだかロマンを感じますし、それを想って選曲しました。」と中野翔太さん。
- ショパン:前奏曲 嬰ハ短調 op.45
- ジャック・セーフ:大きな手のための小品集 op.25より「優しさ」「甘さ」「いたずらっ子」
「ルービンシュタインのサインが残されていることに興奮を覚えました。私は5歳からピアノを始めましたがショパンが大好きで、かつて彼が弾いたであろうこのピアノで今日演奏できることはこの上ない喜びです。」と語られたのは福間洸太朗さん。
そしてこの日、スイスの現代作曲家ジャック・セーフの作品を日本初演されるという大変貴重な機会ともなりました。初めて耳にするメロディにお客様も興味深々で、満場の拍手に包まれました。
- ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番「月光」嬰ハ短調
仲道郁代さんは「小学5年生の頃にウィルヘルム・ケンプの演奏会でベートーヴェンを聴いて感動し、自分の人生におけるピアノへの探求が始まったように思います。ここにケンプのサインが残されているのも何か引き寄せられたご縁を感じます。」と語られ、第1部のラストをドラマティックに締めくくられました。
第Ⅱ部 Passion 華ひらくピアノ
後半は雰囲気が変わり、舞台上も曲に合わせてカラフルに。
ピアノによるエンターテインメントを連弾でお届けしてまいります。
プログラムの解説や、なんと譜めくりまでもピアニストが担うというアットホームで華やかなピアノの世界をご堪能ください。
- グルッグ: オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」より精霊の踊り
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ハチャトウリアン: 剣の舞
連弾演奏 I.中野翔太 Ⅱ. 萩原麻未
(曲目解説 福間洸太朗 / 譜めくり 仲道郁代)
最初にしっとりと穏やかな「精霊の踊り」で幕明け、優雅なピアノの音色に浸ったのも束の間で、福間さんが「ハチャトゥリアンは名前のとおりはっちゃけています!」とユーモアたっぷりに紹介したのが次の曲「剣の舞」。
激しいバッキングとリズムが絶妙に連なり曲は最高潮に盛り上がったところで、1stを演奏していた中野翔太さんがくるりと身体をまわし、萩原麻未さんの左へ手を伸ばし、低音の鍵盤を1つぽん!と叩いて終わり。
あまりの妙技に拍手喝采と笑いの渦が会場内に巻き起こりました。
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ラフマニノフ: 6つの小品より「舟歌」「スラヴァ」
連弾演奏 I.萩原麻未 Ⅱ.仲道郁代
(曲目解説 中野翔太 / 譜めくり 福間洸太朗)
レガシーピアノで祝祭の鐘を打ち鳴らすドラマティックなプログラムとなりました。
色彩豊かにロシアの旋律で人々の心を打ちます。
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ラフマニノフ: ヴォカリーズ
連弾演奏 Ⅰ.仲道郁代 Ⅱ.福間洸太朗
(曲目解説 萩原麻未 / 譜めくり 中野翔太)
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J.シュトラウスⅡ世: 美しき青きドナウ
連弾演奏 Ⅰ.福間洸太朗 Ⅱ.中野翔太
(曲目解説 仲道郁代 / 譜めくり 萩原麻未)
世によく知られる美しいウィーンの青きドナウ川も、グレッグ・アンダーソン編曲による連弾版は全く異なる川にしてしまいました。福間洸太朗さんと中野翔太さんが繰り広げる男性ピアニスト2人による超絶技巧とアクロバットのようなパフォーマンス、そしてユーモアのスパイスたっぷりの一曲でした。
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ラヴィニャック: ギャロップマーチ(8手連弾)
連弾演奏 I.仲道郁代 Ⅱ.中野翔太 Ⅲ.萩原麻未 Ⅳ.福間洸太朗
お披露目コンサート最後の曲はフランスの作曲家ラヴィニャックの粋な作品、1台のピアノに4人のピアニストが立ち向かう(?)。
8手が鍵盤の上を縦横無尽に駆け巡り、ピアニスト達は笑顔とお茶目なしぐさも交えながら音楽の楽しさを存分に伝えてくれ、レガシーピアノの再デビューに大きなエールをいただきました。
会場内は割れんばかりの拍手と笑顔に包まれ、ピアニストのみなさんは互いを讃え合い、そしてレガシーピアノヘ大きな拍手をお贈りくださいました。
「ピアノという楽器は、1人でも2人でも、そして今日のように4人でも、また他の楽器とのアンサンブルやオーケストラとも一緒に楽しめるという、無限の可能性をもっています。眠りから覚めたこの60歳のレガシーピアノが、これから新たに60年、100年と弾かれ続けて、福岡の地で豊かな音楽の時間が紡がれていくことを心から願っています。」
仲道郁代さん
「多くの支援者の方々によってこのレガシーピアノが再び蘇ったことに感謝と敬意を表します。そしてこれから先、このピアノが多くの方々に愛され、弾かれていきますように。」
福間洸太朗さん
「このように1台のピアノに偶然に偶然が折り重なって、今日ここにが存在することがまさに運命であったと思うのです。そのことに私は驚きを隠せません。そしてこのようにかけがえのない想いをピアノに抱いたのも初めての経験です。
ぜひ福岡のみなさま、このピアノを大事にされてください。そして私もまたいつか演奏できる機会を楽しみにしています。」
中野翔太さん
「このようなあたたかい素晴らしい機会に出演させていただいたことを本当に嬉しく思っています。このピアノを初めて弾かせていただいた時からその美しい音色に感動しました。まるでピアノの方から語りかけてくるような、幸せな時間であり稀有な経験でした。どうぞ福岡のみなさま、そしてもっと広く多くのみなさまにこのピアノと幸せな時間をお過ごしいただけますように。本当に今日はありがとうございました。」
萩原麻未さん
ピアニストのお一人お一人からレガシーピアノの未来へ期待のメッセージが語られ、お披露目コンサートは幕を閉じました。
そして舞台はピアノの見学会へと移っていきます。
レガシーピアノ見学会
希望されるお客様方には順番に実際に舞台に上がり、楽器内に残された40人もの巨匠達のサインを間近にご覧いただきました。当日は多くのメディア関係者のみなさまも取材に入られ報道くださいました。
クラウドファンディングの始まった当初より興味深々でも、実際にそのサインを目にすることは今まで叶いませんでした。この機会にと熱心に撮影されたり、思い出の巨匠たちに想いを馳せる会話も聞こえてきました。
多数のご来場、誠にありがとうございました。
Text by:樋口洋子
Photo by:江藤 徹
主催:レガシーピアノ保存プロジェクト実行委員会